「こんばんは、クライヴ」

 穏やかな声と共に純白の天使が舞い降りる。

「・・・何か」

 人との係わり合いが極端に少ないが為に、ぶっきらぼうに対応する漆黒と暗紫の青年。

「はい、今日は贈り物を持ってきました」

 青年のそんな態度など慣れてしまった・・・というよりも、態度の理由を理解している為に気にする様子もなく天使はふんわりと微笑む。

「そうか。・・・いつも、すまない」

 微かに口元を綻ばせ、視線が僅かに和む。青年にとって精一杯の好意の態度も、天使はすべて理解していて。

「喜んでいただけて、よかったです」

 純粋に真っ白な笑顔が青年へ向けられる。


「あの、クライヴ?」

 呼びかけた天使に視線を向けるだけで、青年は続きを促す。

「今日は、お仕事はないのですか?」

 多くもないが、決してなくなりもしないヴァンパイアハンターという青年の生業。不定期であるが故に、天使は時々仕事の有無を尋ねてくる。

「何か依頼でもあるのか?」

 言外にないことを告げる青年に、天使の顔に晴れやかな笑顔が浮かんだ。

「あの、もしよければ一緒に外を散歩しませんか?」
「・・・散歩?」
「はい。・・・・・いけませんか?」
「・・・いや、かまわない。行こうか」
「はいっ」

 了承の返事を貰った天使は極上の笑みで頷き、月光の下へと足を進める。

「行きましょう、クライヴ」

 月光の下、純白の天使の極上の微笑みが花開いた。



「フェイバリットディア〜純白の預言者〜より・女天使とクライヴ」