My Angel〜鋼の行く末〜
『おめー、オレのこと、好きか?』 『好きですよ、ゼフェル様』 思わず聞いたことに、あっさりと答えたアンジェリーク。 けど、オレが聞きたかったのはそんなことじゃねーんだ。 初めて会っときはただの喧しい女だと思っていたのに・・・何でだろうな、こんなにおめーのことが気になっちまうなんて。 おしゃべりで、能天気に笑って。 こいつ、本当に女王候補か?って思っていた。 オレは女王試験なんて、どうでも良かった。 守護聖だってなりたくてなったわけじゃねぇ、無理矢理だったオレが、どうして女王試験に興味が持てる? なのに、アンジェリーク、おめーは凝りもせずにオレの所にやって来ては育成を頼み、自分の事を話し、オレの話を聞きたがった。 何でなんだ? 何で、そんな風に笑える? おめーも、無理矢理、ここに連れてこられたんじゃねーのか? 『ゼフェル様の鋼の力は確かに、使い方を間違えれば大惨事になりますけど・・・』 首を傾げ、考え考え話す姿はいつも笑っているおめーとは違っていて。 『でも、使い方さえ間違わなければ、ゼフェル様の力は人々にとって、必要不可欠な力なんです。それに、気付いておられませんか?他の方々の力も正と負があるんですよ?』 指摘されて、初めて気付いた。 『鋼の力の負ばかりを大きく取られているみたいですけど、他の方々の力にも負があるんです』 『だけどよー、だけど、オレの力はやっぱり、正しくは使われないじゃねーか』 『ゼフェル様の力は、人が創り出した力ですから・・・』 『・・・え?』 思ってもみなかった言葉。人が創り出した、力・・・? 『皆様の力は自然の力でしょう?でも、ゼフェル様だけは人の力。人が生み出した力。だから、負の部分が大きく押し出されるんですよ。人は、自然には畏怖を抱き、その負には怒りがあると思っているけど、鋼の力は自分達でどうにか出来る分、尚更負が出てくると大きく騒いでしまう・・・』 ああ、女王候補、いや、女王だと思った。 何時の間に、こんなにオレ達のことを、守護聖が持つ力のことを知り、考えていたのか。 何時も笑っていたのは能天気なんかじゃねぇ。全てを知って、理解して、受け入れて、その上で笑っていた強さなんだ。 俺の苛立ちがなにから来るのかも、おめーは分かっていたんだな。 分かっていて、それでもおめーは何も余計なことは言わなかった。 オレ自身が認めなくちゃならねーことだから。 ・・・参った。本当に。 そう思って。そうして、気付いた。 オレの中に出てきた気持ちに。 おめーは確かに、女王になれる。その心があれば、きっと、温かい宇宙になるんだろう。 けれど。 オレは、嫌だ。 おめーが女王になるのは、嫌だ。 アンジェリーク。天使という意味の名前。 今はエリューシオンの天使。 その天使が宇宙のものになる? 冗談じゃねぇ。 誰が大人しく渡してやるもんか。 なぁ、アンジェリーク。おめーはオレに鋼の行く末を指し示したんだぜ? それが、どんなにすごいことか、分かってんのか? ・・・分かんねーだろーな、能天気なおめーは。 何時か・・・近いうちに分からせてやるぜ。 そうして、言ってやる。 おめーを・・・愛しているってな。 END |