My Angel〜光あれ〜


『私が・・・好きか?』
『はい!ジュリアス様が好きです!』



 思わず聞いてしまった私に、あの女王候補、アンジェリークは曇りのない笑顔で答えた。
 躊躇いもないその答えは、だが、私が求めているものとは全く異なるもの。

 その言葉に嘘はないだろう。確かに、好意を持ってくれているのだろう。

 だが。

 その好意はあくまで好意であり、私個人を特別に見ている訳ではない。
 あの答えで、そのことを強く思い知らされた。



 初めてアンジェリークと顔を合わせた時。
 正直言って、女王候補としてやっていけるのか不安だった。
 女王陛下の判断に間違いはないだろうが、どうしてももう一人の女王候補のロザリアと比べると不安定さが目に付いた。
 しかし、その私の不安を覆すかのように、あの者はみるみるうちに女王候補に相応しくなっていった。

 日毎に輝き増す、アンジェリークの光。
 時折、その背に翼が見えるのは私の錯覚なのだろうか。

 あの魂の輝き、物事に捕われない自由な心、誰にでも向ける慈しみの微笑み。
 何時の間にか惹かれていた。
 気が付けば、アンジェリークを目で追い、微笑みを受ける者に嫉妬を覚え。
 執務室にやって来るのを心待ちにしている自分がいる。



『光が司る誇りをエリューシオンに』

 執務室に訪れ、アンジェリークが依頼する。

『分かった。覚えておく』

 心の軋みを感じながらも私は答える。



 エリューシオンの天使。
 かの地の民にとって、アンジェリークは確かに天使なのだろう。
 溢れるばかりの愛情をアンジェリークはかの地に注ぎ、かの地もその愛情に応え、健やかに発展していっている。
 その事実が、アンジェリークが女王に相応しいことを示す何よりの証し。

 守護聖筆頭たる、この私こそがその事を喜ばなければならないのに・・・
 あの微笑みが私だけに向けられない、そのことがこんなにも苦痛に感じるとは・・・

 アンジェリークよ。
 輝く翼を持つ者よ。
 お前は笑うだろうか。
 この私がお前を側に止めておきたいと願うことを。

 この溢れ出さんばかりになったお前への想いを胸に、私は今日もエリューシオンへと贈る。
 光輝く誇りを。

 そして、お前にも贈ろう。私の願いとともに。
 お前の未来に、これからの道に、光あれ、と−−−

 そして、願わくばその側に私がいることを・・・そんな未来であることを・・・
 私は望んでいる。

 輝く天使、私の愛しい天使よ。
 ・・・愛している・・・





END