銀・天使


 昔、昔の物語。
 ある国での昔話。

 ある国の東に広がる森には一人の芸術家が住んでいた。
 彼の名前と作品は広く人々に知れ渡っていたが、芸術家自身の事はまったくと言っていいほど知られていない。彼が極端なほど人嫌いで、滅多に人前に出て来ないが故に。
 そして、今日も彼は森の奥の小屋で、ひっそりと作品を作り続けている。

 月が輝く銀色の夜。天使が舞い降りてきた。

 満月の光が大地を銀色に染め、幻想的な風景を青年の前に広げる。
 スケッチブックを片手に、青年は森の中を歩き回る。自分の庭同然の森の中、迷うこともなければ恐れるものもない。
 気に入る場所を探し、歩いていた青年の足が止まった。
「天、使?」
 純粋な驚きに、無意識の呟きが唇から零れ落ちる。
 ひどく華奢な感じの、少女の姿をした天使がそこにいた。
 青年の呟きに反応し、振り返る。
 天使と、芸術家の視線が絡まった。
(なんて・・・なんて、蒼なんだ)
 驚きに見開かれた、天使の大きな瞳は澄んだ、サファイアの宝玉。汚れない、無垢さを表すような、見ていると吸い込まれそうな気にさせる、極上の蒼。
 肩の辺りで揺れている栗色の髪は月の銀の光を弾いて輝き、体を動かす度に小川が流れるような音をたてる。

 そして。

 身の丈程もある、純白の翼。

 天使と呼ばれる奇跡の存在がそこにいた。

 バサリ

 空に在る者の証しである純白の翼が広げられる。
「待って!」
 見知らぬ者に対しての警戒だろう、その場から去ろうとする意志の音に我に返り、青年が叫ぶ。
 再び、サファイアの瞳とシアンブルーの瞳が交錯する。
「何も・・・何もしないから。だから、もう少しここにいてくれないか?」
 自分でもらしくないと思う。
 人嫌いで、周りに誰かがいるとそれが鬱陶しくて、誰も近づけさせなかった自分が人外の者とはいえ、一緒にいたいと願うなんて。いや、人外だからだろうか?
 野生の小動物を宥めるような響きの声にサファイアの瞳が瞬き、広げられた翼が閉じられた。
 脅えさせないように、静かに天使に近づいた青年は、宝石のような煌きをみせるサファイアの瞳を覗き込む。
「・・・僕はセイラン。世間では、芸術家と言われている。君の名は?」
 蒼の髪の青年の言葉に、栗色の髪の天使は困ったように眉を寄せた。自分の右手で唇を押さえ、ゆるく首を横に振る。
「もしかして、声が出ない?」
 縦に首を振る天使。
「何故・・・」
 少女らしい紅色の唇から、今にもみずみずしい声が流れてきそうなのに、それなのに、声が出ないなんて。
 青年の疑問にやはり、困ったような笑顔を見せた少女は青年の芸術家らしい繊細な手を取り、その掌に文字を綴る。
「・・・『アンジェリーク』・・・『天使』?それが、君の名前?」
 こくり、と白い翼を持つ者は青年の質問に頷く。
「出来すぎだね。『アンジェリーク』という名の天使だなんて」
 僅かな皮肉。天の邪鬼な性格は、ここでも言葉となって零れ出る。しかし、いつもと違うことにすぐにフォローだろう言葉を青年は紡いだ。
「でも、君にはあっていると思うよ」
 サラリ、と青年の手が栗色の髪を梳く。
 すっかり警戒心を解いたらしい天使は青年の手を嫌がるでもなく、不思議そうにシアンブルーの瞳を見つめる。
「・・・?どうしたんだい?」
 ふと、空を見上げ、何かを探すような素振りを見せる少女。青年の質問に天使は空を指差し、翼を広げた。
「帰るのかい?」
 頷き、天使はふわり、と浮かび上がる。
「また、会える?」
 青年の問う声に、少女は鮮やかな笑顔を見せた。上昇しかけた体が青年の目の前まで降りて来て、紅色の唇が青年の頬に触れる。
「アンジェリーク?」
 自分の名前を呼んだ滑らかなテノールに答える術のない天使は自分の唇に指を当て、音のない言葉を紡いだ。

『また、会いましょう』

 バサリ

 月を背に、夜空を飛んで行く天使の姿を見送って、その時ようやく、青年は天使に銀色がよく似合うことに気がついた。

 月の天使が舞い降りる。手を伸ばしても、その存在には手が届かなくて・・・

「・・・らしくないな」
 キャンバスに向かい、青年は一人呟く。描いているのは銀色の似合う月の天使。
「・・・本当に、らしくない」
 自分はどちらかと言えば、執着する方ではなかったはずなのに。物でも、人でも、描く風景ですら、描き上げれば未練なくそこから立ち去るというのに、あの日、あの夜、銀色の夜に出会った銀の天使はこうしていくらでも描き続ける。

 微かな羽音が遠くから聞こえる。

 青年の目の前に、サファイアの瞳の天使が舞い降りる。
「やぁ、アンジェリーク。今日も来たのかい?」
 あの日から、毎日のように天使は芸術家のもとを訪れていた。何をするわけでもないが、青年の側にただ座っていたり、青年が創り出した数々の芸術作品を眺めていたり。
 その存在は鮮やかなのに、大気のように自然で。
 だからだろうか、天使が去った後はいつも何かが抜けたような、空虚な気持ちになる。
「アンジェリーク」
 名前を呼ぶと、天使は振り返る。鮮やかな笑みを浮かべて。
 この輝く笑み、その体に宿る輝く魂を自分だけに向けて欲しいと思うのは、天に対する謀反なのだろうか。

「こんにちは」
「誰?」
「ワタシはレイチェル。見ての通り、天使よ」
 金の髪、菫色の瞳の美少女が背中の翼を広げ、青年と少女の目の前に降りて来た。
「アンジェリークの知り合いかい?」
 青年の問いにサファイアの瞳の天使は頷く。もの問いたげに菫色の瞳の天使を見つめて。
 その視線を感じて金髪の天使は肩を竦める。
「女神様から、呼び出しが掛かっているわよ、アンジェリーク。急がなくてもいいとはおっしゃっていたけど、行った方がよくない?」
 またもや頷き、栗色の髪の天使はその背の翼を広げる。その前に、栗色の天使が青年の腕に軽く触れたのを、金色の天使は目撃した。
 お礼のつもりだろう、金色の天使を軽く抱き締めてから、栗色の天使は空へと飛んで行った。
「・・・で、君は僕に何か用でもあるわけ?」
「あるから、ここにいるのよ」
 その場に残っている金髪の天使は青年の冷たい声にも動じず、腰に手を当て、肩をそびやかす。
 バサリ、とその背にある翼が音を立てた。
「アンジェリークのことで聞きたいことがあるの。あなた、あの子の翼に触った?」
「・・・触ったけど」
 純白の翼に触れたくて、栗色の天使にそう言うと、彼女はしばらくためらった後、触らせてくれたが。
 それが何か?といった顔で青年は答えるが、金髪の天使は軽く舌打ちをする。
「まいったわね。あの子、そこまで気に入ったっていうの?」
「一人で納得していないで、分かるように説明してくれるかい?」
 ぶつぶつ呟く天使に、不機嫌になる青年。状況が分からないのだ、当然だろう。
「説明してもいいけど。あと一つだけ、聞かせてもらえる?あなた、あの子のことをアンジェリークを、どう思っているの?」
「好きだよ」
 間髪入れずに答えが返る。シアンブルーの瞳が真っ直ぐに菫色の瞳を射抜いた。
「アンジェリークが好きだよ。あの魂が好きだよ。あの雰囲気が好きだよ。あの笑顔が好きだよ。・・・そうだね、愛しているよ」
「・・・本当に、まいったわ」
 ため息をついた天使はカリカリと頭を掻く。どうやって話そうかと考えてでもいるようだ。
「そうね・・・アンジェリークの声が出ないのは生まれつきじゃないのよ。女神様に封印されたの」
「封印?」
「そう。天使と聞いてどういうイメージが浮かぶ?」
 問いかけに青年は首を傾げ、自分なりのイメージを思い浮かべる。
「そうだな。天の御使い、慈愛の象徴、癒しの存在・・・」
「アンジェリークはその言葉そのものの存在なのよ」
「どういうことだい?」
 シアンブルーの鋭い視線にびくともせず、菫色の瞳は平然と受け止める。
「あの子がアンジェリーク、『天使』という名を持っているのは伊達ではないわ。あの子の持つ、癒しの力はとても強い。下手をすれば、死んだ者まで生き返らせることが出来る程」
 だけど、と菫色の瞳が心配そうな色に染まった。
「そんなことをすれば、当然、命の因果律が狂うわ。アンジェリークは優しすぎる。傷ついた命を見捨てることなんて、出来ない子。だから、女神様はあの子の声を封印した」
「何故、声を?」
「声が力の媒介になっているからよ。でも」
 困ったような顔で金髪の天使がため息をつく。
「ワタシ達天使にとって、翼は命の次に大事なものだわ。だから滅多なことでは触らせないし、許しもしない。アンジェリークはあなたにそれを許した。あの子は・・・たぶん、あなたの為なら自分の存在を賭けてでも、何かをしようとする。それでもあなた、あの子の存在を受け止められる?」
 返ってきた返答は素早く、かつ、簡潔だった。
「当然」
 迷いも、揺るぎもないシアンブルーの瞳に天使は呆れたように吐息をついた。
「あの子の人を見る目って、本当にいいんだか悪いんだか。ここまで言える人は滅多にいないから、いいと言えるんだろうけど」
 素直に喜べないのは、何故なのかな、などと呟きながら天へ帰る為に金髪の天使は背中の翼を広げる。
「それだけ言うのなら、アンジェリークをよろしく頼むわね。それから」
 バサリ、と翼を羽ばたかせ、青年の頭の上から天使は忠告する。
「この辺りで人間達の変な動きがあるわ。アンジェリークが見つかったら大騒ぎになるでしょうから、気をつけて」

 その天使の忠告が形になったのは、数日後のことであった。

 近くの湖へスケッチに行き、自分の家に帰って来た青年は不愉快そうに眉をしかめた。
 ごてごてと飾り立てた、趣味の悪い馬車が家の前に止まっている。歓迎したくない人種が来訪したようである。
「・・・お前が、あのセイランなのか?」
 馬車の中から尊大に問いかける声に、青年は冷ややかに答えた。
「いきなり来て、自分の名前も名乗れないような者に答える義務はないね」
 冷淡な声に、護衛だろう周りの男達がざわり、と殺気立つ。その空気が分からない筈はないだろうに、更に青年は言い放った。
「それに、何様か知らないけど、自分は御大層に馬車のなかで顔も見せない。どんな人間だろうと、そんな態度の者にどうして返事をしなけりゃならないのさ」
「きさま!言わせておけば!」
 ジャキッ、と剣に手を掛けた男に馬車の男が制止する。
「止めろ。私が馬車から降りればいいのだろう。しかし、噂に違わない態度だな」
 馬車から降りてきた男はやはり、尊大な態度で青年と対峙する。
「私はこの辺りを治める領主だ。最近、この辺りで天使を見るという噂があるのだが、お前は知らないか?」
「天使」
 思わず青年の唇から呟きが零れたが、幸いなことに相手には聞こえなかったようだ。
 冷たい美貌は少しも動かず、青年は対峙する相手をじっくりと観察した。
 あの、金髪の天使の忠告がこんなに早く形になるとは。
 そうして、観察した結果、「信用なし」との評価を下した青年は冷淡な態度を貫いた。
「天使・・・ね。だからといって、俗物に教えるほど僕は落ちぶれちゃいないよ」
 飽きるほど見てきた、特権階級独特のエゴに満ちた人物。そんな者に教えればどんなことになるのか、火を見るより明らかだ。
「きさま、言わせておけば!」
 皮肉に満ちた青年の言葉に、再び男達が剣に手を掛け、青年はそれを嘲笑う。
「ふん、俗物は何かと言えば権力か力で捻じ伏せようとする。呆れるぐらい、何処へ行ってもその行動パターンは同じだね」
 納まっていた殺気が再び高まった時、青年の耳に聞き慣れた羽音が聞こえてきた。
 ハッとして空を見上げる。
「来るな、アンジェリーク!!」
 叫びに、周囲の者も空を見上げ、そして、見た。
 優雅に純白の翼を広げ、眼下の場面に驚愕してサファイアの瞳を見開き、柔らかな風に栗色の髪と纏っている服の裾をなびかせている天使を。
「あれだ!捕まえろ!!」
「させない!」
 抱えていたスケッチブックを地面に放り出し、青年の手元から何かが飛び出した。

 ビシィッ

「うわっ!?」
 数人の護衛の手から、剣が弾き飛ばされる。
「アンジェリークを捕まえてどうするつもりだ」
 低い怒りの篭った声を出す青年の手には、一本の鞭が握られていた。先程、男達が剣を弾かれたのはこの鞭が原因である。
「たかが芸術家に教える筋合いはない」
「そう。だけど、アンジェリークにとって良くないことは分かりきっている。そんなことは、させない」
「邪魔だてするのなら、容赦はせん」
 一気に青年の周りに男達がかかっていく。
 青年の手の鞭が鮮やかに舞い、剣を弾き飛ばす。
 だが、一人対多数の不利はいかんともしがたく。

 銀の軌跡

 赤い血飛沫

「・・・!!!」
 心配そうに空にいた天使の瞳が極限まで見開かれ、声の出ない唇が何かを叫ぶ。
 地面に倒れた青年。
 草が、大地が、赤く染まっていく。

 バサリ

 周囲の人間には目も向けず、栗色の髪の天使が大地に降りた。
「今だ、捕まえろ!」
 命令に、男達は動こうとして・・・自分達が指先一つ、動かせない状態になっている事に気がついた。
「何をしている!?」
 そういう自分も動けなくなっている事に気づき、男は唸る。
「あれを捕まえる、絶好の機会だというのに・・・ええい、誰か、何とかしろ!!」
 叫ぶ男を尻目に、天使は青年の側に駆け寄った。手を伸ばし、自分の胸に抱き締める。
 ぬるり、とした感触が手に伝わる。
 命の源が、青年から流れ出る。
 次第に、青年の温もりが失われる。

「・・・ぁ・・・」

 微かな声が、天使の唇から零れた。封印されたはずの、声が。

「・・・ぃ・・・ゃ・・・」

 ポロリ、とサファイアの瞳から水晶が零れた。

 冷たくなる。
 大事な、何よりも大事な温もりが、その存在が、いなくなる。

「いやあああああーーーーー!!!」

 銀の糸のような声が、血の色に染められ辺りに響く。
 その声に反応し、周囲の森がざわめいた。動物達の咆哮が、鳥の悲鳴が森中に轟き、天使の精神に同調する。
「死なないで・・・お願いだから、死なないで・・・」
 自身も血にまみれ、清らかな水晶の光を瞳から零し、天使は白い腕で青年を抱き締め心から願う。
「私の命をあげるから・・・だから、いなくならないで」
『待ちなさい、アンジェリーク』
 天使の願う声に突然もう一つの声が加わった。
 神々しい、慈愛に満ちた女性の声。
『その力を使えば、あなたは存在できなくなります。それでも、使うのですか?』
「使います」
 躊躇いなく、少女は言い切った。
「たとえ、命の因果律に背こうと、私はこの人がいなくなることに、絶えられません。たとえ、女神様のご命令だろうと、これだけは譲れないんです」
 背中の純白の翼が大きく広げられる。
「申し訳ありません、女神様。私は、この人を選んでしまいました」
 少女の体が光に包まれる。
 少女の内にある癒しの力が青年に向かって注がれる。
 そして。

「アンジェリーク・・・?」

 シアンブルーの瞳がサファイアの瞳を映し出した。

「セイラン」
「アンジェリーク、声が・・・」
 驚く青年の目の前で、更に驚く変化が少女の身に起こった。

「翼が・・・消える?」

 広げられた純白の翼が、端から大気に融け消えていく。羽ばたきに抜け落ちた、羽根も同様に光を放ち消えていく。
 後に残ったのは一人の少女。
 栗色の髪とサファイアの瞳の天使ではなくなった少女。
「一体、何が起こったんだ」
「アンジェリークはあなたの命を助ける為に、自分の力を使い切ったのよ」
「レイチェル」
 突然現れた金髪の天使に元・天使の少女がその名を呼んだ。
「まったく。仕方のない子ね、あんたってば。女神様の代理みたいな形でワタシが来ることになったんだけど・・・その様子じゃ、後悔なんてちっともしていないわね」
 天使の問いに、少女は躊躇いなく頷く。
「そう。あんたがそう決めたのなら、ワタシは何も言わない。でも」
 菫色の瞳が、鋭いともいえる真剣な色を浮かべ、少女の側に立つ青年に向けられた。
「アンジェリークは天使であることを捨てた。あなたの為に、あなたの命を救う為に、自分に掛けられた女神様の封印を破ってまで。・・・あの時の質問をもう一度するわ。あなた、この子を受け止められる?」
「当然」
 あの時と同じく、返答は間髪入れず、簡潔だった。
「僕がアンジェリークを愛したのは天使だからじゃない。愛したのはアンジェリークの魂、存在そのもの。アンジェリークがアンジェリークであれば、人間だろうが天使だろうが構わない。僕が恐れるのはアンジェリークという存在がなくなることだけだ」
「よく、分かったわ」
 片手を挙げ、天使は了解のポーズをとった。にっこりと、満足そうな笑顔を浮かべて。
「女神様からの伝言。『そこにいる人間達の記憶を消し、森の入り口にまで移動させておきます』って。それから、『たとえ人間になったとしても、アンジェリークは私の大切な愛し子。いつまでも、見守っています』とおっしゃっていたわ。・・・ワタシも、あんたを見ているからね、不幸せになったりしたら、承知しないわよ」
「うん」
 天使の一風変わった励ましに、少女はふわりと微笑む。幸せに満ちた笑みを。
「じゃ、この後処理は任せといてね」
 動けずにいた男達の方を向き、天使が軽く腕を振った途端に馬車ごと男達は消えていた。天使の言葉通り、森の入り口に移動したのだろう。
 綺麗さっぱり、いなくなったことを確認した天使は翼を広げ、空へと浮かび上がる。
「・・・最後の伝言。『幸せになりなさい』」
 大きく頷いた少女に、再び満足そうな笑顔を浮かべ天使は天へと帰っていった。
 後に残ったのは青年と天使であることをやめた少女の二人。
「アンジェリーク」
 青年の腕が華奢な体を抱き締める。
「セイラン」
 少女の白い腕が青年の首に回る。
「愛している、アンジェリーク」
「セイラン・・・愛している」
 幸せに満ちた抱擁と囁きに、同じだけの幸せが返る。
「ずっと、ずっと僕だけの天使でいてくれるね?」
「ええ。ずっと、側にいるから」

 昔、昔の物語。
 芸術家と天使であった少女は、女神様と親友の天使に見守られ、いつまでも幸せに暮らしていました。
 ある国の、昔話。


END