フラワー・ギフト


 花を贈ろう、あの人に
 大事な、大切なあの人に
 想いを込めて、花を贈ろう



 金色のふわふわとした髪が陽光を弾き、キラキラと光っている。
 澄んだ若草色の瞳は微笑み、自分の手の中にある花束を見つめる。
「リュミエール様、喜んでくださるかしら?」



 大好きなあの人に、花を贈ろう
 たった一人の大事なあの人
 生まれ出でた大切な日だから



 青銀の髪の青年が窓辺の椅子に座り、ハープを爪弾いている。
 繊細な指先が弦に触れると月光のような音が辺りに広がる。
 ふと、何かに気付いたようにアクアマリンの視線を外に向け、青年は仄かに微笑った。



 花に想いを込めて
 大切なあの人に



 コン、コンコン。
「リュミエール様?」
 ノックの音に応えを返すとふわふわの髪を揺らせ、少女がひょこっと扉の影から顔を出す。
「ようこそ、アンジェリーク」
 穏やかに微笑んだ青年は大切な少女に傍らの椅子を勧める。
「有り難うございます。・・・あの」
 後ろ手に持っていたものを少女は差し出した。満開の笑顔と共に。
「お誕生日、おめでとうございます、リュミエール様」



 贈る花束、色とりどりの
 誰よりも大好きなあの人だから
 幸せを願って



 少女が差し出したのはパンジーの花束。
 五本〜六本をピンクのリボンで束ねている花束は差し出している少女によく似合っている。
「私にですか?これを?」
「はい!」
 一点の曇りもない笑顔に、青年の顔も嬉しさにほころぶ。
「有り難うございます」
 受け取った花を見た青年の脳裏に、ある言葉が横切る。
「アンジェリーク。この花の花言葉を知っていますか?」
 途端に、少女は真っ赤な顔をして頷いた。
「はい。・・・知っています」
 知っているからこそ、その花を選んだのだと分かる態度。
「そうですか。では」
 花束の中から一本を引き抜いた青年は少女の制服のボタンホールに差し込んだ。
「リュミエール様?」
「私から、あなたに」
 ますます赤くなった少女はそれでも、青年に対して笑顔を返した。



 パンジーの花言葉は。



『私を想って下さい』



 花を贈ろう、大好きな人に
 想いを込めて、想いを束ねて
 何よりも誰よりも大好きなあの人に



「でも、一番のプレゼントはあなたの笑顔です。花のようなあなたの笑顔で私は幸せになれるのです。ですから、アンジェリーク。いつまでも私の側で笑っていてくださいね」





END