幻の花びらが舞う
『リュミエール様』
幻の声が聞こえる
『リュミエール様』
今は遠い廃虚の都市に
置き去りにした恋のかけら
私の愛しい女王候補
『雪を好き』と言った貴女
まるで私のようだと言われた時のこの鼓動を貴女は知らない
望んでも叶わないと知っている願いにそれでも早まる鼓動を知らない
願ってはいけない 思ってもいけない
知っていたのに 分かっていたのに
それでもあがく浅ましい願い
『私だけの・・・・・』
雪深く白い季節は終わりを告げ
淡く柔らかな色彩が目覚める
秘め続けようと誓った想いを凍らせた
雪は溶けて流れとなる
愛しかった
微笑む度にあふれるような魂の輝きが
想わずにはいられなかった
晴れた春の雪のような儚い恋だと分かっていても
ただ 愛しかった
それだけだったのに・・・・・
終焉は何時の時にも訪れる
残酷に 無慈悲に 躊躇いもなく
飛空の都市での恋は 終わりを告げられ
ここ聖地に 新しい御世が宣言される
春の陽光煌く空を
儚く消えるさだめの結晶が舞う
まるで 純白の華のように
「リュミエール様」
呼ぶ声に振り返る
「リュミエール様」
この想い知らぬ天使
「早く参りましょう」
差し伸べられる白い指
「・・・・・申し訳ありませんが、お時間をいただけませんか?」
心を偽ることはもはや出来ない
この身に宿る全ての想いを
貴女に伝えたい
「出会ってからずっと、貴女が好きでした」
これ以上後悔したくはない
「そして、今では貴女を愛しています」
白い指に誓いの口づけ
『永遠に愛し続けます』
「私は臆病で、ずっと言えずにおりました。ですが、女王試験の終了を知った時、せめて私が貴女を想い続けていたことを知っていて欲しかったことに、気がつきました」
驚いている愛しい金の天使
「機会がなく、今日に、即位式の日になってしまいましたけれど、私の心を、受け止めては下さいませんか?」
見る間に潤む瞳は森の色
「その涙の意味を、私はよい方にとらえてしまいたい・・・・・」
揺れる髪は太陽の光
「・・・・・有り難う」
金と緑の天使を抱き締める
やっと抱き締めることが出来る
「え?・・・・・えぇ、そうですね。私としては、もうしばらくこのままでいたいのですけれど、守護聖と新女王補佐官が揃って遅刻するわけには参りませんものね」
そして浮かべられた
その微笑みは陽光よりも輝き
新しい御世を紡ぐ女神にも似て
女神への敬愛よりも愛おしい
「一緒に、参りましょう」
春日に溶ける雪が降る
まるで花びらのように風花が
一度は置き去りにした恋の
その成就を知っていたかのように
風に溶ける花が舞う
「・・・・・愛しています」
END
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