Holy Prayer


 聖なる夜に祈ろう  HolyNight
 皆に幸せが降るように
 聖なる夜に祈ろう  HloyPrayer
 皆に幸せが訪れるように

 祈ろう  祈ろう  聖なる夜に
 今  私が出来る  一番のこと





「アンジェリーク、ここにいたの?もうすぐ夕食だっていうのに・・・捜したわよ」
 紺色の髪と紫紺の瞳の少女はようやく見つけた金色の親友に向かって言葉を掛けた後、少し、首を傾げた。
「・・・何を、しているの?」
 飛空都市の片隅にある、小さな教会。30人も入れば一杯になるだろう、小さく簡素だが、暖かい雰囲気のある教会だ。
 もうすぐ夕食だというこの時間に、金の髪と若草色の瞳の少女は幾人かの人々に混じって聖壇の前で跪いていた。
「うん、祈っていたの。今日は、イヴだから」
「・・・あんたの家って、そんなことをしていたの?」
「ううん、ぜんぜん。ごく普通の家だもん、ホームパーティーぐらいよ、していたのは」
 立ち上がった少女は純白のワンピースを身につけていた。そして、金の髪には純白のベール。
 ピンクや赤といった可愛い色が似合う少女ではあったが、純白もこれ程似合えばいっそ、敬謙な殉教者にさえ見えてしまう。
「で、どうして急に、こんなことを思いついたのかしら」
 当然といえば当然な紫紺の親友の言葉に、少女は人差し指を頬に当て、首を傾げる。
「うーん・・・なんとなく、かなぁ。イヴだなって思っていたら、何だか祈りたくなって」
「何をなの?」
「今日までの感謝と、皆様方の幸せ。私、皆様方やロザリアに出会えてとても幸せなんだもの。だから、皆、幸せだったらいいなって思って」
 だから、柄にもなく祈りに来ちゃったの、と悪戯っぽく舌を出してみせる少女はすでにいつもの少女。
 先程まで真摯に祈っていた天使ではなく、無邪気で明るい笑顔の皆の天使、皆が幸せにと願う、心優しい天使だ。
「まったくあんたってば・・・まぁ、私もあんたのそういうところが好きなんだけどね」
 開けっぴろげな好意に照れて苦笑しながら、紫紺の瞳の少女は金の髪の少女の隣、聖壇の前に進み出る。
「ロザリア?」
「柄でもないけど、私も祈るわね。あんたが幸せであるように」
「私、幸せだけど?」
 きょとん、と首を傾げる大切な親友に再び苦笑し、紫紺の瞳の少女は跪いた。
「だったら、もっと幸せになるように。皆様方も、今よりもっと幸せになるように」
「うん」
 嬉しそうに笑った金色の少女もまた、紫紺の親友の隣に跪き、祈りを捧げる。





 二人の天使の祈りは皆の上に降るだろう
 慈愛に満ちた祈りはすべてを包むだろう
 見守る天使達によって、宇宙は優しい世界になるだろう



 聖なる夜に祈ろう  HolyPrayer<
 皆が幸せであるように
 聖なる夜に祈ろう  HolyNight
 皆が幸せでいられるように



「今よりもっと、もっと、皆様方が幸せでありますように」



 Merry  Christmas





END