My Angel〜闇に射す光〜


『お前は・・・私が好きか?』
『はい、好きですよ、クラヴィス様』



 つい、言葉にしてしまった私の質問に、あの少女は屈託なく笑って答えた。
『お前は、私が怖くないのか?』
 そう聞こうとしていたのに、出てきたのはその奥にあった本当に聞きたいこと。
 どちらにせよ、あの少女は天使の笑顔で答えてくれた。



 アンジェリーク−−−天使の名を持つ者。
 もう、なにものにも心を動かされることはないだろうと思い、そうして長き時間を過ごしていた私の心を揺り動かす少女。

 真っ直ぐな瞳で私を見つめ、闇がどんなものかを見極めようとする真摯な態度。
 素直にあるがままを受け入れ、理解しようと努力する姿。
 一つ一つの行動がひどく心を騒がせ、見つめずにはいられない。

 初めての顔合わせの時に現れたアンジェリークは黄金のオーラに包まれていた。
 眩い程輝いていながら、そのオーラは優しく、アンジェリークの魂を如実に表す。
 そう、初めてアンジェリークを見た時から見つめずにはいられなかった。

 ただ、見つめるだけだった筈なのに・・・こんなにも執着を覚える程、私はアンジェリークに惹かれていた。



 アンジェリークが誰かに笑い掛ける。
 金色の少女が誰かに話し掛ける。



 それだけのことなのに、私の心はざわめき、私の司る安らぎとは程遠い場所へと向かう。
 嫉妬という、暗い情念が私を支配する。



 黄金のオーラを持つ者。
 それ以上に、黄金の魂を持つ者。



 アンジェリーク。お前は知らないだろう。
 お前の存在で私が癒されているなどとは。



『闇があるから、安らげるんです』

 鮮やかな笑顔で淀みなく、言いきったアンジェリーク。

『確かに、恐怖を呼ぶものもあります。けれど、優しさも確かに内包しています。それが、闇というものではありませんか?』

 自分なりに捕らえたのだという、闇の姿。
 揺るぎ無い言葉は、自分の信念に従ったが故のもの。
 ・・・眩い、光の言葉。

 お前は分かっているのだろうか?
 その言葉で、私を一瞬にして癒したということを。
 真っ直ぐに・・・ただ、真っ直ぐに先を見つめるその姿に、私が未来を感じたことを。

 何事にも心を動かされることはないと思っていた。
 いや、動かすまいと思っていた。
 ただ、時間に流され、無為な時間を過ごし、未来などくだらぬと思い。
 その私の感情をあの少女は・・・天使は真っ直ぐに私の中の闇を見詰めることで、動かしたのだ。



 アンジェリークよ。
 私の心を動かす天使よ。

 お前は私の中の闇に射し込む一筋の光。
 未来という希望を見せてくれる、唯一の者。

 その未来に、私がいることを願う。
 心のままに、私の想いを告げられる日が来ることを願う。

 そう、『愛している』、と・・・





END