側にいさせて〜ディアーナ〜


 ねぇ、知っています?
 わたくしが好きな人はあなただと。
 あなたが好き。大好き。一番好き。
 だから、側にいたいんですの。
 恋する女の子なら、当然でしょう?
 ねぇ、大好きなあなた。 わたくしを側にいさせてね。

「あ〜、姫様。よく頑張りましたねぇ」
 のんびりとした雰囲気の青年が、その雰囲気に似合ったのんびりとした声で少女の勉強の仕上がりを褒めた。
「この分なら、今週末にお休みをとられても誰も文句は言いませんよ」
「本当ですの、アイシュ?」
 ふわふわとした印象の可愛らしい少女が嬉しそうに尋ねると、青年は穏やかに笑って太鼓判を押す。
「ええ。僕が見る限り、本当に姫様は頑張っていますよ」
 にこにこと微笑みながら勉強道具を片付け、当然のように青年はお茶の用意をする。
「初めて会った頃の姫様を思うと、本当に同じ姫様かと思うんですよねぇ」
「・・・アイシュ。それは言わないお約束、というものですわ」
 かなり痛いところを突かれた少女は冷や汗をかきながら答えた。呆けているが時々、かなり痛い突っ込みをする青年である。
「何か、理由でもあるんですか?」
「・・・女の子の秘密ですわ」
 お茶請けのケーキを口に運びながら、今度はすまして答える少女である。
「秘密、ですかぁ?」
「ええ、秘密」

 だって、わたくしが苦手なお勉強を頑張るのも、アイシュがいるからなんですもの。
 アイシュの側にいたいから。アイシュに認めてもらいたいから。
 ・・・アイシュが大好きだから。
 だから、わたくしは頑張りますの。
 いつか、きっと、この恋を実らすために。

 世界で一番大好きなあなた。
 あなたの側にいたいの。
 ずっと、ずっと、側にいたいの。

 ねぇ、側にいさせてね。


END