星見
日付が変わる真夜中の時刻。 魔法研究院のある一室からは明かりが漏れており、その部屋の主がまだ起きていることを教えていた。 コン、コンコン 「・・・?」 部屋に響いたノックの音に、部屋の主である青年の視線が机の上から扉へと向けられる。その顔に訝しげな表情を浮かべて。 人が寝静まったような時間、しかも人当たりがいいとは決して言えない自分のところに来る人物は限られている。 椅子から立ちあがり、扉を開けた青年の前には果たして、予想違わず一人の少女が立っていた。 「・・・メイ、どうしたんだ?こんな時間に」 青年の問いに、栗色の髪と瞳を持つ少女はにっこり笑うと青年の手を取り、ぐいっと外へと引っ張り出す。 「お、おい、メイ?」 「星がすっごく綺麗なの。ね、キール。散歩、しよ?」 にっこり、にこにこと満面の笑顔を浮かべる少女に、実はかなり、青年は弱い。これでおねだりをされれば、ほぼ、青年が折れる。 ・・・これも、惚れた弱みというのだろうか。この青年の弱点を少女がまだ知らないのが、せめてもの救いかもしれない。 「・・・しょうがないな」 ため息をつきながら、それでもマントを取ってきた青年の姿を見た少女の顔がパァッと明るくなった。勝ち気ではあるが、根本的に素直な少女は実に正直に喜怒哀楽を表情に出す。青年にはとても真似の出来ない、そして羨ましい素直さだ。 魔法研究院の門はしっかりと閉まっているので、こっそりと鍵を開けて出て行く。 そうして、二人が向かったのは魔法研究院の近くにある丘の上。 「すっごーい。満天の星空だねぇ」 空を見上げ、少女が嬉しそうに呟いた。新月であるため星の輝きが強く、少女が言うように空は銀の砂粒を振り撒いたような、満天の星空だった。 「綺麗・・・。気持ちいいなぁ」 うっとりと星を見ながら、少女は両手を空へと差し上げる。まるで、その手に星を掴もうとするかのように。 「ねぇ、キール。綺麗よねぇ」 振り返った少女は青年を見つめ、にっこりと笑った。 サラリ、と星明りで銀の縁取りをされた栗色の髪が揺れる。 栗色の瞳が星明りを受け、キラリと光る。 青年を振り返った動きでフワリ、とスカートがひらめく。 それはまるで、幻想のような光景。触れれば消えてしまうような儚さ。 急に襲ってきた恐怖に、青年は衝動的に少女を抱き締めた。 「キール?」 「・・・お前が・・・消えてしまうかと思った・・・」 掠れた声で呟いた青年は更に、抱き締めた腕に力を入れる。 「ちょっ・・・痛いってば、キール」 「メイ・・・ここに、居ろよ。俺の側を・・・離れるな」 溌剌とした生命力、輝く魂、未来を見据える強さ、そんな少女を欲した時から抱いている恐怖。 突然に自分の視界に飛びこんできた少女故に、また、突然自分の前からいなくなってしまうのではないかという、喪失の恐怖。 好奇心旺盛で、自分の運命に他人を巻き込む台風のような少女に振り回され、けれども決してそれらは嫌ではなかった。それはすべて、少女の存在故に許容できたこと。 「居るわよ、ここに。あんたの側に。そう、言ったでしょ?」 青年の背に両手を回し、少女は囁いた。 「言ったじゃない。キールが好きだって」 青年のコバルトグリーンの瞳を覗きこみ、少女は鮮やかな笑みを浮かべる。 「何度言ってもいいわ。あたしは、キールが好き。大好きよ」 「メイ」 青年の手が少女の髪を梳き、丸みを持った頬に添えられると少女の瞳が閉じられた。 暖かな温もりと想いがお互いに伝わる。 「・・・愛している・・・」 甘い声と甘い言葉に、少女はうっとりと、幸せそうな微笑みを浮かべた。 「滅多に聞けないものを聞けちゃった。すごく、嬉しい」 「メイ・・・」 もう一度口付けた青年は少女を更に引き寄せると、その口付けを深いものに変える。 「んっ、んん・・・んぅ・・・」 息苦しいまでの激しい口付けに、少女の膝が崩れた。 官能直撃というような口付けを受けた少女の瞳は潤み、青年を見上げる。 「も・・・キールのばかぁ。何てキスをするのよぉ・・・」 「我慢が効かなくなったからな」 サラリ、と言われた言葉の意味を理解するのに数秒。理解した少女が焦っても、その時はもう、遅かった。 「ばっ、ちょっと、ここ、外・・・っ!」 「誰も見ていないさ」 「そーゆー問題じゃ・・・あっ」 首筋に青年の吐息を感じ、チリッとした刺激に思わず声をあげる。 「や・・・やだぁ・・・」 逃げたくても先ほどの口付けで力が入らず、草の上に押し倒された。 満天の星空の下、少女の真っ白な肢体が露わになっていく。 「キール・・・キールゥ・・・」 懇願の声もあっさりと無視され、丁寧に愛撫されれば青年の手に慣らされた少女の肢体は素直に反応する。 「あ・・・や、あんっ」 ペロリ、と白い丘の上の蕾を舐められ、少女の背が反らされた。白い肌の上、幾つもの紅の華を咲かせながら青年の両手は知り尽くした少女の性感帯を刺激する。 「は・・・あ、あふっ、う・・・んっ・・・」 片手は少女の柔らかな丘の形を変え、片手は背筋を何度も撫でさする。その手がゆっくりと下肢へと降りて行った。 「あ、はぁぅんっ!」 中心に触れられた途端、少女は嬌声を上げた。強い電流にも似た快感が背筋を駆け上って行く。 「あ、あうっ、は・・・あぁん・・・」 次々と口から零れる甘い喘ぎと下肢から響く水音が重なり、淫蕩さを醸し出す。 「も・・・やだぁ・・・」 途切れることのない快感に、少女が泣き声をあげた。しかし、青年は容赦しない。 「これだけ濡れていて、嫌はないだろう?まだ、付き合ってもらうぞ」 「キ、キールのばかぁ・・・すけべ・・・」 「元気じゃないか。まだ、大丈夫だな」 「大丈夫じゃないぃっ。せめて、部屋に帰って・・・」 「もう、こんなになっていて、それは無理だと思うぞ」 「ばか、ばか、キールのばかっ。・・・あうっ」 自分の中に入りこんできた指に驚き、少女は思わず青年にしがみついた。 「随分絞めつけて・・・感じているじゃないか」 青年の指が動くたびに、ピチャ、クチュ、と妖しい水音が響く。 「ふ・・・あ、はぁ・・・あふっ」 喉を晒すように頭を仰け反らせ、耐える少女の喉元に青年の唇が触れた。ペロリ、と舐めた後、軽く噛みつく。 「んっ、んんっ」 ゾクリ、とする刺激に少女はうめいた。 「お前・・・本当に感度がいいよな・・・」 感心したような声に、少女は真っ赤になって青年を睨んだ。 「は、恥ずかしいこと、言わないでよ・・・っ」 「そうか?俺としては嬉しいが」 「・・・誰かさん、の、ようなことを、言うなっ」 「・・・元気だな、お前」 「だ、誰が、そうさせてんの、よっ」 青年によって体中が燃えるような感覚に陥りながらも文句を言い募る少女は確かに、根性が入っている。 だが、それは返って青年の欲望を募らせることとなる。 「ひぁっ、あぁあっ!」 指を抜かれたかと思うと入りこんできた青年に、少女は悲鳴を上げた。 「あ、あふっ、あん、あぁっ」 容赦なく責められ、少女は何も考えることができずにただ、嬌声を上げる。 「メ・・・イ・・・」 掠れた青年の声が耳に届いたのと同時に、青年の想いを受け止め、少女は気を失った。 「キールの、ど阿保ーーーーっ!!!」 気を失った少女が青年の腕の中で気がついた途端、怒声をあげたのは当然かもしれない・・・ END |