「君を待つ」 カチャ、と繊細な指がコーヒーカップをソーサーに戻し、手にしていた文庫本のページをめくる。 パラリ、と微かな音と共にページが繰られ、涼しげな視線が文字を追う。 ある喫茶店の窓際に座った青年は先程から店中の視線を集めていた。 艶やかな長髪を首の後ろでひとつにくくり、露わにしたその顔は人目を集めずにはいられない美貌である。 冷たさを感じる無表情はどこか、現実を超越したような雰囲気でうかつに声をかけられないものがある。だからと言って、無視出来るような存在感のなさはなく、結果、店の内外の人間達はちらちらと青年の美貌を覗うという行動をするしかなかった。 ふと、青年の視線が窓の外へと向くと微かに唇の端を上げる。 微かな・・・本当に微かな笑みだったが、今まで無表情だったが故に、その微かな笑顔は青年の冷たい美貌を華やかに彩った。 ざわり、と外野の人間達のざわめきが大きくなる。 気配に聡い青年がそれに気づかないはずはないのだが、見事なまでに無視しきり、ただ自分の最愛が現れるのを待った。 遠くからでも分かる、輝く神気と清冽な気を纏った少女。 自分の全存在にかけて愛した聖なる乙女。 己の全てはただ1人のもの。 待つことは苦にならない 己の最愛を待つことならば、尚更に 窓際の椅子に座り、君を待つ 気を感じ取れば窓の外へと視線を向けて 人込みの中から現れる少女は少し、息を弾ませて 大きな瞳はキラキラと輝き、愛らしい顔には満面の笑顔 それを見る事が青年の楽しみ 待ち合わせは喫茶店 その窓際で君を待つ 最愛の君を待つ END |
(イリスより) SIRFISさんよりお誕生日のお祝いに頂きましたー♪ 「窓ガラスごしに待ちかねていたあかねを見つけて、少し微笑みを浮かべる泰明さんです」 というお言葉からミニ創作をつけてみました。 イ、イメージに合っていますでしょうか・・・(汗)余計だったかも(大汗) とにもかくにも、本当に有難うございます |