恋に落ちて(後編)


それからというものゼフェルは日の曜日ごとにアンジェを連れ出して一緒に遊んでいた。
アンジェの方も育成の依頼をしなくても、毎日1回はゼフェルの執務室に訪れるようになっていた。
試験の方は、中央の島まで後一歩というところまできていた
その日は雨が降っていた。
夕方、仕事を終えたゼフェルは自分の家に帰る
こんな日はアンジェの顔が見たくなる。いや、今すぐ逢いたかった。
ここ一週間というものアンジェはまったくゼフェルの執務室に顔を出さなかったのである
かといって自分から寮に会いに行く勇気もなかった
ふと見やった玄関にゼフェルは信じられないものを見た
そこには雨に濡れたアンジェが膝を抱えていたのだ
「アンジェリーク?」
と思わずゼフェルはつぶやいていた
アンジェはにっこり微笑み
「ゼフェル様、おかえりなさい」
「おめーなんでここに居るんだ?」
「ゼフェル様の帰りを待ってたんです」
「ずぶぬれじゃないか。いつからここにいたんだ?」
「さー忘れちゃいました」
ゼフェルはアンジェの手を乱暴に握り家の中に入れた
「痛い、ゼフェル様」
「あ、わりー」
ゼフェルはアンジェの手を離すとタオルとシャツを持ってきた
「そのままだと風邪ひくぞ。シャワー貸してやるから浴びてこいよ」
「そんな、いいです・・・はくしょん」
「ほれみろ。シャワーは突き当たりを右に行ったところにあるからな」
ゼフェルが言うと、アンジェはすごすごとシャワーロームに向かった
ゼフェルはアンジェがシャワーを浴びている間に少しだけ部屋を片付け、アンジェのために甘いホットミルクを作った
「ゼフェル様・・シャワー貸してもらってありがとうございました」
「別に礼なんていらないぜ。それよりホットミルクいれてやったから、こっちきて飲めよ」
振り返りアンジェを見たゼフェルは耳まで赤くして、視線をずらした。
アンジェの格好は、ゼフェルの大きいシャツをちょこんと着、髪はまだ濡れたままだったのだ
ゼフェルはそれだけで、どぎまぎしていた
アンジェはすすめられるままにソファに座り、ホットミルクに口を付けた
「で、何であんな所でオレを待ってたんだ」
「私、ゼフェル様が約束してくれたこと、できません」
「何で今更・・・」
ゼフェルは愕然とした
ここにいるのがやになったのか?それともオレとの約束だからか?などと考えているゼフェルにアンジェは言葉を続けた
「私、いまの気持ちのままで女王になっても、立派な女王になれません・・だって私・・」
アンジェは必死になって泣くのを我慢していたが、我慢しきれずうっすらと涙を浮かべていた
「お、おい。何泣いてんだよ」
「私、ゼフェル様が好きです。ゼフェル様の側しか自分の帰る場所だと思えないんです」
ゼフェルは呆気にとられていたがすぐアンジェを抱きしめていた
「ゼフェル様?」
「アンジェ、オレもおめーが好きだ。女王になんかしたくねー。オレの・・オレの側にいてくれー」
アンジェはいつもの笑顔をゼフェルに向けた
どちらともなく唇を重ねていた
「ずっとオレの側に居ろよ」
「はい」
そしてアンジェはもう一度微笑んだいつまでもあなたの側に・・・。


お・し・ま・い