茶屋《彗流紫苑》より物語りは始まる
金色の少女《杏樹》 美味しいお茶と菓子を出すことで小さいなりに繁盛している茶屋《彗流紫苑》の看板娘である。ふわふわした金色の髪と翠の瞳が印象的な、全体的に可愛らしい雰囲気をまとっている。
「杏樹、何時ものを」
「はぁい!」
常連の声に元気に応えて、杏樹は奥の店主に『何時もの』を注文する。ちゃんと店主の返事を確認すると、彼女は手馴れた動作でお茶を容れる。
「いらっしゃいませ。《柳水詠流》様」
「今日和、元気そうで何よりです」
流水涼風のごとき佳人が薫るような笑みを浮かべる。類い希なる琴の名手《柳水詠流》である。長い滝のような銀青の髪を柔らかに編んで湖色の瞳のたいへん優しい細やかな心遣いをする人で、杏樹をたいへん可愛がっている。
「そう、今日はお土産があるのです」
今も懐から手のひらに乗る包みを取り出す。趣味のよい藍染めから桜を模した櫛が顔を覗かせる。
「何時も美味しいお茶を容れてくれている、お礼です」
「よろしいんですか?」
「えぇ。今度市に行く時につけてくれますか?」
「はい!」
包みごと受け取った杏樹が嬉しそうに目を細めて頬擦りする。
「喜んでいただけて、私も嬉しいですよ」
渋い色の湯飲みを両手で包み込むように持って、彼はほんわりと笑んだ。少女が嬉しいと、彼も嬉しい。
「杏樹!」
品が出来て店主が杏樹を呼び、応えてすぐさま柳水詠流の元に注文の品を運ぶべく移動する。そんなふわふわした髪を風に揺らせて働く少女に目を向けていた柳水詠流は、その優し気な面に一瞬暗い思い悩む表情を浮かべた。もっとも本当に一瞬だけで、杏樹が品を受け取って振り向いた時には跡形もなかったが。
曜日的時間的に一段落ついて他に客の姿もなく、品を持って来た杏樹に柳水詠流は、
「杏樹も一緒に」
『如何ですか?』と言いかけたのだが、
「きゃっ」
「危ない!」
突然背を押されて杏樹が蹌踉ける。狭い店内、倒れれば椅子や机にぶつからない筈なしで、柳水詠流は咄嗟に手を差し伸べる。使い込まれて角がとれているとはいえ、当たる場所によっては大怪我を引き起こす。
「大丈夫ですか?」
「は、はい!だ、大丈夫ですぅ」
如何に男性としては華奢で優雅な女性と見間違う佳人柳水詠流であろうと、あくまで男性であることには変わりなく、胸のなかに抱かれるように支えられている杏樹は幾分取り乱して答えた。真っ赤に熟れた頬に手をやり粗熱を取ろうと必死になる。
「喧嘩でしょうか?」
取り繕うように少女は言う。自分の背を押した、気絶した男を見ながら。
「邪魔するぜ」
耳に心地良い声が響く。条件反射的に『看板娘』としての自分を取り戻した杏樹はすぐに笑顔を向ける。
「いらっしゃいませ!・・・・・あ、《御蘇夏》様」
馴染みの客に杏樹の笑みも深くなる。
「よぉ、今日も可愛いな」
「有り難うございます。何時ものでよろしいですか?」
「あぁ」
椅子を引きながら答える《御蘇夏》 いい腕の用心棒だが、仕事に女性が係わっていないと蹴るらしい、という噂がある。何時も粋に着物を崩しているのだが、何故か今日は何時もより乱れている。どうやら先程まで喧嘩していたらしい。ちょうど足元にいる男をゲシゲシと無残に踏んでいる。
「相変わらず女性であれば制限なしですか?」
さらりと向かいに座る柳水詠流が言う。眼差しに潜む刺には毒がありそうだ。
「失礼なことを。可愛いのを『可愛い』と言って何処が悪い」
上に『ど』をつけたい程に『きっぱり』と彼は言い切った。
「えぇー、何を、しているんですか?」
互いに負けるものかと視線をぶつけているところに、妙にくつろげる、今のような場合は気がそがれる声が届いた。
「いらっしゃいませ、《瑠芭》様、《緒梨琵衣》様」
「お久しぶり、元気してた?」
色艶やか、女性の持つ妖艶な色香、本物の女も裸足で逃げ出す美貌のれっきとした男性である劇場一番人気の役者《緒梨琵衣》の言葉に杏樹は笑って答えとした。派手な容姿ばかり目が行きがちだが、決してそれだけでない人であることを杏樹は知っている。
「あー、何時ものをお願いしますね」
「私は軽く食べる物お願い。やぁっと稽古終わってさぁ、お昼食べてないのよ」
本好きで優しい寺小屋の先生として親しまれている《瑠芭》と緒梨琵衣に頷いて、お茶を置くと杏樹は店主を手伝うべく奥に消えた。
だから、彼女は知らない。彼等の交わしたその内容を。
「ここに通うようになって大分経ったわねぇ」
「えぇ。ここのお茶とお菓子は絶品です」
「何時も笑顔の天使様もいるしな」
「そういえば、初めて来た時はまだ十にもなってなかったんですよねぇ?光陰矢のごとしとはこのことですねぇ」
「今や十六花も蕾の一番初々しい時期だな」
「「「・・・・・御蘇夏?」」」
「ぃやぁ、いい天気だなぁ」
ひとしきり笑い声が広がり、
「・・・・・私は迷っています」
ふと呟かれた言葉は密やかに他の者達の心に染み渡った。
「柳水詠流・・・・・その、気持ちは分かりますが」
「分かっています。それでも、あぁして楽しそうな彼女を見ると・・・・・」
「だが、残された時間は少ない」
「大丈夫だよ。あの子ならきっとやってけるさ」
「運命の輪は回り始めました」
薄物の黒絹を被った神秘的な女が白い手の上、黒に近い紅の布で大切そうに持った水晶球から視線を上げると、囁くように言った。
「運命の輪は回り始めました。・・・・・がきっとお側に参ります」
黒絹の綾布が風に流れた。赤い髪を高く結い上げた美貌が月の光を受けて白く浮かび上がった。
いま一人、光の差し込まない奥まった上座に座っている者が優雅に頷いた。
大通りに市の立つ日、本来ならばこういう日こそ働くべきなのだが、店主には実は八人もの子供がおり休みは比較的とりやすいこともあって可愛らしい赤い着物に身を包んだ杏樹が柳水詠流との待ち合わせの場所に急いでいた。
「るん」
貰った櫛をさして嬉しそうに駆けて行く少女は気がつかなかった。
カチン
少女のつけていた櫛が落ちた・・・・・
待ちぼうけ、人々の起こす風によって緩く編んだ髪を揺らせながら人込みの中のたった一人を彼は探していた。
「柳水詠流」
「っ・・・・・何だ、御蘇夏ですか・・・・・」
名を呼ばれて振り向いた先にいたのが待ち人でなく、女性を二人程連れた御蘇夏であることに思わず柳水詠流はため息をついた。
「ご挨拶だな」
「あぁ、すみません・・・・・その、杏樹と待ち合わせていたもので。まだ来ないんですが、知りませんか?」
「いや、知らんが、おかしいな。あの娘は約束を破る娘じゃないが?」
「あ!柳水詠流さん!御蘇夏さん!」
「《紫苑》じゃねぇか」
凛々しい袴姿の少年が駆け寄って来る。杏樹の働く茶屋《彗流紫苑》店主の四番目、杏樹と同じ年の《紫苑》である。
「今日和、紫苑。そうだ、杏樹を知りませんか?」
「貴方と一緒じゃないのか?今朝新しい櫛さして嬉しそうに言ってたけど」
「「・・・・・」」
視線を合わせるだけで彼等はそれぞれが抱く不安を読み取った。
「紫苑、《藍祢》を知らねぇか?」
「アイツはまだ道場にいるよ。手合わせ終わって僕は店を手伝いに早く帰るとこ」
「では、《是隕》は?」
「《円瀬留》のところじゃないかな。昨日ウチの店で『チュピの小屋が云々』て話してたから」
明朗に答える紫苑
「そうですか、有り難う」
「悪いけど紫苑、このお嬢ちゃん達よろしくな」
「え!?」
反論を言う間もなく二人は駆け出す。御蘇夏は紫苑の来た方向、柳水詠流はそれとは全く反対の方向へ。
「ちょっとぉ!何で僕なのぉ!?」
喚く紫苑に御蘇夏は振り返って、そのよく通る声に笑いを含んで言った。
「そのお嬢ちゃん達はお前さんのおっかけもやってるんだ!」
「っ!・・・・・僕は女だぁっ!」
力いっぱい叫ぶ紫苑の声が二人の背後で響いた。
・・・・・キリリッ
赤い鉢巻きを額に巻いた少年が、弓を引いて射抜かんばかりの真剣な視線を的に向けている。ただ一点を見据える澄んだ風色の瞳が凛々しいこの少年こそが、御蘇夏の言っていた《藍祢》である。
「ッ!」
『パンッ』 弾けるように矢が的の中心に刺さった矢を割って刺さる。
割れんばかりの歓声にさしたる感慨を抱かないのか、藍祢は黙然と礼をすると次の者の為に列を離れ、自分の荷物の上に投げるようにかけていた手拭いで額から頬へと流れる汗を拭く。そこに、
「藍祢!」
「御蘇夏様!?」
自慢の赤い髪を風に流してやって来た御蘇夏のただならぬ様子に、即座に荷物を肩にかけると藍祢は走った。
人の手のあまり入っていないそこに彼等はいた。
「よかったね、チュピ」
差し伸べた指に留まる小鳥に笑いかけるのは、可憐との形容が似合いそうな可愛らしい少年《円瀬留》である。
「ここでいいんだな?」
「うん」
木の枝の上で器用に小さな小屋を取り付けている少年がいた。何でも屋の《是隕》である。
「円瀬留、是隕」
「あれ?柳水詠流様?」
「どうしたい?」
息を乱して走って来た柳水詠流の姿に彼等は不吉な予感というモノを覚えた。
「それが」
「いたいた!」
「あ、御蘇夏様」
「藍祢じゃねぇか」
ゼェゼェと情けない程に疲れ切った風情でやって来た二人だが、こればかりは責められない。何せ、柳水詠流の倍以上は御蘇夏は走っているし、藍祢は道場で弓のみならず剣の方も鍛錬をし終わっていたのだ。それと蛇足だが、勿論柳水詠流とて全速力で二人の元に来たが、俊足などというものでない神足の域である二人と比べるのは可哀想であることは分かって欲しい。更に付け足すなら、彼等は人目を引く柳水詠流を追いかけ、柳水詠流は道行く人に確かめ確かめ二人を探したのだ。
「杏の華、消えました」
「「「っ!」」」
少年達の間に共通した驚きが走る。
「手掛かりは一つとしてありません。すぐさまこれより捜し出さなくてはなりません」
柳水詠流の言葉に異論を挟むことも、頷くこともない。それは当然のこと。
「藍祢、お疲れのところを申し訳ありませんが、瑠芭様を通して報告を。円瀬留に是隕はそれぞれの情報網を使って下さい」
「俺もちょいとばかりツテがある。柳水詠流、お前さんは残ってくれ」
「分かっています」
琴のお師匠様である柳水詠流は当然として頷いた。鳥達の友である円瀬留はそういったモノから情報を集められる。何でも屋の是隕なら、情報集めは仕事のうちでも楽な方だ。だが、彼にはそれが出来ない。
「では、私は緒梨琵衣の方にも声をかけておきます。落ち合う場所は何時ものところでよろしいですね?」
各々頷いて、駆け出した。
薄暗い部屋である。
「話は聞いた。アイツは来ると言ったが残して来た。よいな?」
「当然です。あの人が残っていなくては、誰があの方を守るんです?」
光を秘めた夜空のような不思議な色の髪と瞳の青年が音もなく現れたが、彼等のうちで警戒する者はいない。何時ものことだ、この人が人である限り完全には隠しきれない筈のほんの微かな気配をも断つことは。
「で、何か分かったか?」
「はい、《玖羅弥洲》様。すぐに是隕が下請けをした者を連れて来る筈です」
闇色の髪を背中の中頃で緩く結った青年《玖羅弥洲》が軽く頷く。そしてふと気がついたように呟いた。
「意外と早いな」
「杏樹にこの前櫛を贈ったんです。それがある店で売りに出されまして、そこから」
「間抜けだな」
「まったくだよねぇ?」
深く頷く緒梨琵衣。綺羅綺羅しい艶やかな衣装が闇の中にも鮮やかだ。
「連れて来たぜ」
面倒くさそうに是隕と御蘇夏が後ろから蹴るようにその部屋に入れた。苦痛の呻きがあがるが気にする者は一人としていなかった。
冷ややかな沈黙が流れる。それを破ったのは玖羅弥洲であった。
「何処だ?」
聞く者の心を冷やす声 付き合いの長い連中はその中に存在する烈火のごとき怒りに顔を引きつらせた。彼があの少女を可愛がっていたのは仲間内では周知の事実だが、滅多やたらに感情を出さない彼故に、何時もより低い声が恐い。
「・・・・・」
「答えはなしか。ま、この世界の常識か」
「円瀬留、藍祢、是隕、外に出ていろ。見ていて楽しいモノではない故な」
「従っときなさい。玖羅弥洲の聞き方って心臓に悪いよ。聞かれてる本人よりはマシだけどさ」
醒めた声で外の方を指す緒梨琵衣に従って三人が外に出る。
「今はあまり機嫌がよくない。早く喋らんと、死ぬことになるぞ?」
背筋を氷が滑り落ちていくような感覚を覚える声を三人は背後で聞いた・・・・・
完全に気を失った男達が転がったままの部屋にもう一度入った三人は、あまり楽しくない指示に抗議した。
「何で俺達は残んなきゃなんねぇんだよ」
「僕だって、杏樹を助けたい」
「同行を拒まれる理由を教えて下さい。理由の如何によっては従えません」
「「「邪魔」」」
あまりにもあっさり答えられた三人の思考回路が一瞬ショートした。が、すぐさま復興させるとくってかかる。
「俺達だって邪魔になんねぇぐれぇは鍛錬してる」
「確かに隠密行動をせざるをえないところにこれだけの人数で行くのは危険かもしれませんが、決して邪魔にはなりません」
「お願いします、連れて行って下さい」
どう説得しようかと顔を見合わせるなかで、一人沈黙していた玖羅弥洲が威圧するように一歩彼等の方へと足を進めた。
一気に緊張する彼等に彼は言う。
「まだ、お前達は知らずともいい世界だ。私達は嫌でももう引き返すことは出来ない。だがお前達はまだ知らない。知らざるをえない日が来るまではそのままでいろ」
それは、真実の言葉。だから反論の意志はあっても言葉を出すことは出来なかった。
「・・・・・に連絡をいれておけ。少し早くなったが、仕方あるまい」
「分かりました」
不承不承藍祢が頷き、他の二人も不満はあったが承諾した。
新月の闇は濃く、不安を象徴するよう。ところどころに輝く星ぐらいでは闇を安らぎのものにするには役不足だ。
物音一つたてずにまとめられた豪奢な金色の髪が流れる。何時もの綺羅綺羅しい服の代わりに闇に溶け込む濃紺の衣装をまとった緒梨琵衣である。
「何処の屋敷も造りはそうたいして変わんないわね」
「えぇ、その方が都合がいいですけれどね」
きつく結った長い髪、ほつれ髪が頬にかかっているその姿はぞくっとするような独特の凄みがある、柳水歌流だ。
「こういう時に人を隠す場所は大概決まってるのが嬉しいぜ」
チキリと鍔鳴りの音をさせて、御蘇夏が危険な色を混ぜた声で呟いた。闇を弾く赤い髪が、こういった行動には邪魔だがこればかりは仕方がない。
「ようも、たばかってくれていたものだ」
最も闇に溶け込みそうな玖羅弥洲が冷ややかな怒りの声を紡ぐ。憤りの理由は二つ。あの少女を攫ったこと。もう一つは彼等の守らなくてはいけない至高の座に座る《あの方》を騙していたこと。
「私と柳水詠流で探すわ。そっちよろしくね?」
「分かった」
軽く頷いて、それぞれがそれぞれのすべきことの為に二手に別れた。
漆黒の闇の中で、少女は一人考えた。
『私はどうしてここにいる?』
『私はどうなる?』
記憶の最後にひっかかった腹部の痛みが前の問いの答えを教える。が、後の答えは何処にも存在しない。
『このまま、愛した人達の元に戻ることは叶わないのか』と、彼女は泣きたい気分で自問する。答えを得られるわけではないけれど、何も考えない方がいいのかもしれないけれど、一度紡がれた思考の糸は途切れることなく続いていく。
漆黒の闇の中で、少女はひとりぼっちで考える。
『杏樹』
名を、呼ばれた気がした。ふと、風を感じた。
「誰か、いますか?」
震える声で少女は言った、希望を込めて。
風が確かに頬を撫でる。そのなかに、優しく甘い香りがした。
『カタリ』 少女の身体が傾く。
逆光のなか、扉を開けた影が笑った・・・・・
揺らめく炎の明かりが妖しく彼等を闇から浮き出す。
「罪は明白、せめて足掻くな」
蒼白になった男、身なりは可成いい。ただ、惜しむらくは情けない程脅えている。
「杏の華をみつけたよ」
黒い衣装に血の染みをつけた緒梨琵衣が冷たい声で言った。冷ややかに男を見下げる。
「長居は無用だな」
これ以上一時とてここに居たくはないといったような口ぶりで御蘇夏は言った。
「行きましょう」
細い華奢な身体つきのわりに柳水詠流の力は強い。催眠効果のある香を焚きしめた着物で少女をくるんでいるのだが、さして苦痛の色もなく抱えている。
「沙汰は明日にでも下ろう。あまり期待はせぬことだ」
玖羅弥洲が残酷なまでに言い切って身を翻す。他もならって何の関心も持つことなく身を翻した。
「出、出あえ!」
「足掻くなと言っただろうが」
足掻く声と冷ややかな声が闇に交差する。
「面倒だな」
「致し方あるまい」
心底飽いた声に、同じように飽いた声が応じた。
「守護衆、参る」
血の香りに少女は目を覚ました。視界を覆う薄布の香と混じり合い、それは甘く苦い不思議な香りで、夢と現の狭間に彼女を置き去りにする。
聞き慣れた声が耳に届く。
「仕置き、完了」
「・・・・・様?」
呟きが唇を突いて出た。
「おやすみ、貴女は知らなくていい」
違う人の、だけど同じように聞き慣れた声が囁いた。
そうして、また意識が闇に飲まれた・・・・・
「ヤダ、起きちゃったの?」
「また眠っていただきました」
「お嬢ちゃんが見るもんじゃねぇさ」
「行こう」
白刃が闇に紅い血の華を咲かせて、消えた。
後日、ある古くから続く有力大名の急な代替わりが行われた。表向き先代は領地で病気療養とされていたが、一部の真実を知っていなければならない者達だけは知っている。
血色の真実を・・・・・
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