罪を犯せし者〜罪と罰〜

罪を犯せし者〜罪と罰〜



 荘厳華麗な聖地の中央にその聖なる神殿はある。代々の女王の居城でもあるかの神殿では、新世界の初代女王となった少女の即位の式が行われていた。
 一人、一人、また一人、己の心と力、全てをもって仕えることを誓う。

「金の髪の新女王よ。我が司る闇の力をもって、私はお前に仕えよう。女王とは時に辛いことを決断しなくてはならない。だが忘れないで欲しい。私達守護聖がいるということを」
 闇色の衣装に身を包み、女王の左に詰める《 闇の守護聖》 がそう宣言した。新たなる女王、彼にとって三人目の女王へとその忠心を捧げる誓いを。

「この世界に生きる全ての心あるモノ達に誓います。私の全てをもってして、生きる心を持つ全てのモノのより良き未来の為に尽くすことを、新世界初代女王たる私が、ここに誓います」
 優しい桜色の優美な服をまとったまだ少女でしかない新世界初代女王は、力の及ぶ限りに全ての生きるモノ達に誓いを立てた。

 こうして、偽りの宣言はなされた・・・・・

 純粋な白い布を幾枚も重ねた衣服の歴代中最も幼い女王は首を傾げた。《 闇の守護聖》の名を敬称付きで言い、続けて誰にというわけでなく問う。
「またお籠もりかしら?」
「陛下、御言葉遣いが違います」
 瞳や髪の色とは違った深みのある藍の服の《 女王補佐官ロザリア・デ・カタルヘナ》は厳しい声で注意をする。もともと大貴族のお姫様であった彼女は厳しく育てられた経験を活かして、現在は庶出の現女王の立ち居振る舞い全ての先生的な役割も負っている。女性特有の母性本能も混ざって女王を歴代の誰よりも素晴らしい女王にすることを−本人である現女王にとっては迷惑な程−堅く誓っており、私的な部分では親友であることもあって公私の区別なく『ビシバシ』厳しく接している。
「だってぇ、今更出来ないよぉ」
「女王陛下!」
「ふぇぇぇん」
 少々甘えた声にもびくともせず、女王補佐官は今日も厳しい。もっとも、あくまで少女自身のことを思うからこそ、海より深い愛情故だ。・・・・・女王はきっと『そんな愛情いらない!』と力を込めて言うだろうが・・・・・
「で、リュミエール様?」
 かの守護聖と最も仲の良い《 水の守護聖リュミエール》 に女王補佐官は視線と声を向ける。女王の問いかけの答えを求めて。
「はい、相変わらずの御様子で。ちゃんとお誘いしたのですが『機嫌が悪い』と」
「普通『機嫌』ではなく『気分』ではないか?」
 『どちらにしろ職務怠慢な』と呟く《 光の守護聖ジュリアス》 に、優しい湖水の瞳の守護聖はかの人の言葉を一字とて変えてはいないことを告げる。
「新世界の安定も取れた途端に、昔に逆戻りですかな?」
「どうしたのかしらねぇ。あんなに頑張ってたのに、ホント、安定した途端にコレなんだもんねぇ」
 近しい年の気安さから『ポンポン』と言葉を交わすのは《 炎の守護聖オスカー》と《夢の守護聖オリヴィエ》 である。
「ま、安定しちまえば俺達の出番なんてほとんどないけどな」
「だからって、これで、えっと、何回だっけ?」
「連続十回のサボリ、だよ」
 美貌の誉れ高い守護聖の言葉を受けるように、年少である《 鋼の守護聖ゼフェル》《風の守護聖ランディ》 《緑の守護聖マルセル》 が言い、これまたこの台詞を受け、
「体調が思わしくないのではないでしょうか?」
 悠然とした独特の余裕のようなものを漂わせる《 地の守護聖ルヴァ》 が女王に言う。人嫌いのかの守護聖は−あまり人のいない処との条件がつくのだが−外に出るのを気晴らしとしている。『それがこの頃全く外に出ていない』と。
「そうですか・・・・・お見舞いに行った方が良いですよねぇ?」
「だから、その言葉遣いをいいかげん直しなさいって言ってるでしょうが!」
「あぁんっ、ロザリア怖いよぉ」
 怒れる女王補佐官に、全く頭の上がらない女王は完全に泣き声だ。だが、それが尚更女王補佐官に怒りを与える。
「あんたがそうさせてるんでしょうが!」
「ふぇぇぇぇぇん」
 小さな子供のように目尻に涙を溜める女王は、実はこれでも女王位を継いで五年経っているのだが。・・・・・断言出来る。全く精神的には進歩していない。

 足元で優しい衣擦れの音と草を踏む音がささやかに流れる。
「うぅん!やっぱり外は気持ちが良いわ」
 チェックの厳しい女王補佐官の目を盗むのはハッキリキッパリ並大抵ではなく、それならばと元々かの女性のいない夜中に外に出た子供っぽい女王陛下は、静かな森の湖の辺りに夜の散策と洒落込んだ。
 夜特有の安らいだ空気を胸いっぱい吸い込んだ女王は、内心のグチを呟いた。
「全く、どうしてロザリアったらあんなに怒るのかしら?皆様方他に人がいない時なら構わないって言って下さったのに」
 拗ねたように女王は言うが、実際のところ、単に何時まで経っても言葉遣いのちっとも直らないのに諦めて守護聖達は言ったのだが、当の女王は当然ながらそんなこと全く知らない。
「綺麗な星空」
 上機嫌で散策を楽しんでいた少女の足が、唐突に止まった。
「・・・・・そっか、もう女王試験から五年も経ってるのよね。忘れていたわ」

 女王候補として初めて女王の前に立った時
 自分の育てることとなる新大陸へ初めて降りた時
 まるで夢のようだったとても長くて短いあの日々
  姉のような優しく美しい竜の占い師のいた星空のテント
  今では補佐官として自分の側にいてくれるロザリアと意見を交わした王立研究所
  色々な魅力にあふれた守護聖達と過ごした公園や湖

「もう、あんな日は来ないのね」
 突然憂鬱に少女は呟いた。目の前の湖水に遠い日の悲しい思いが蘇って、苦しい。いっそ呼吸が止まった方がマシなのではないかと思えるような苦しみ。
「誰かいるのか?」
「え?」
 背後からの声に慌てて振り向けば、
「女王!?」
 昼間のこと心配した闇の守護聖がそこにいた。
「何故ここに?それもこのような時間に?」
 咎めるような響きは微塵とてないが、少女は肩を落としてお説教を聞く姿勢である。
「眠れなかったか?」
「はい」
「せめて女王補佐官を供にした方が良いぞ。後で知ったならば、ロザリアはきっと怒り狂うであろうから」
 嫌な想像である。
「風邪を引かぬうちに早く帰られるが良かろう」
「後少しだけ、ここにいたいんです。駄目ですか?」
 相変わらずの敬語に苦笑を口元に刻んだ闇の守護聖はゆるく頷いた。
「本当に少しだけならば」
 『ほっ』とした様子で少女は微笑んだ。

 月のスポットライト
 魔法のような 月の光に誘われて
 少女は 遥かな夢を見る

 白い靴が水面に触れると、綺麗に円を描いて湖水に波紋が刻まれる。
「危ないことをするものではないぞ?」
 何処か危なっかしいあどけない女王の細い腰に腕を回して、耳元で囁くように闇の守護聖は言う。そのまま湖に身を任せそうな世界の守護者に注意する口調で。
「・・・・・ても、良いですか?」
「何?」
「少しだけ、女王候補だった頃に戻っても、良いですか?」
 翠の瞳の守護女神は自分を支えている青年にも聞きづらい声で問いかける。か細く弱々しいその声に、彼は頷くことで答えとした。
 ためらいに唇だけが震える。言葉とならない言葉を紡ぎだし、意を決して声とした。
「貴方が好きです」
 驚愕のあまり表情のしようのない青年の腕の中で少女は小さく笑った。
「ずっと引っ掛かっていたんです。これですっきりしました。もう二度と言いませんから、気にしないで下さい」
 『明日からもっと女王らしくなるよう務めます』と、いまだ自分を支える闇の化身の腕を優しく押しのけて、
「っ!」
 掠める口づけ  ただし頬への
 『するり』  少女は身を離して視線を夜の森に向けたまま言った。
「おやすみなさい。また明日」

 立ち尽くす闇の守護聖の上で、夜の女王が銀の光を投げかけている。

「今回は正真正銘風邪のようです」
 またもや定例の女王との謁見に現れない闇の守護聖のことである。
「本当に風邪か?仮病ではあるまいな?」
「虚言はするなが家訓です。ちゃんと取り次ぎの侍従から聞きました。御本人は床を離れることすら出来ないそうです」
 光の守護聖の言葉に水の守護聖が反論する。敬愛するかの守護聖と自分に係わることだけに常日頃よりも、少々言葉が強い。当然ながらこの場合、虚言を嫌う性格のリュミエールにわざわざ問いかけたジュリアスが圧倒的に悪い。
「風邪かぁ、何してたのかしら?」
「そうですねぇ、オスカーなら夜ばいでしょうが」
「笑えないって」
 そう言いながらも遠慮なく夢の守護聖は地の守護聖の珍しい冗談に華やかな笑い声を上げた。意外とこれでルヴァも茶目っ気も兼ね備えているのだが、こういう軽口は社交的で話術に富んだオリヴィエに比べればえらく少ない方である。
「人をダシにしてんじゃねぇよ」
「じゃぁダシにされんなよ」
 憮然と毒づく炎の守護聖の台詞に間髪置かずに鋼の守護聖がまぜっ返す。こちらも意外といえば意外ながら、喧嘩ばかりしている兄弟のような感じで仲が悪い訳ではない。
「あのぉ、陛下の御前ですけどぉ」
「分かってますか?」
 『多分分かってないだろうな』と思いながらも、もともと仲が良好な緑の守護聖と風の守護聖は同輩一人と先輩三人に声をかける。もっともマルセルやランディの声は予想通りに、てんで届いていなかったようだが。

 主人のサクリアに反応してか、闇色の館は何時もひっそりとした安らかな空気をしている。御忍びスタイルで女王が訪れたその夜も同様である。
「見舞いに来たのだけれど、良いかしら?」
「はい、陛下」
 応答に出た初老の女官はちっとも女王らしくない女王であることを心得ており、快く館の内へと招き入れてくれたのである。

 見舞いの品の一つである花を花瓶に挿してもらうと、手ずからそれを持って女王は館の主の部屋を訪れた。
「見舞いがすんだらすぐ帰るから、部屋にお帰りなさい」
 『顔をみるだけだから』と、ロザリアにさんざん怒られながら身につけた優雅な微笑みを浮かべて案内の侍女に言う。初老の女官に言い付けられて女王を案内した年若い侍女はすぐさま出入り口への最短の帰り道を教えると礼をして敷地内の、彼女達の為の小さな館に帰って行った。
『コココココンッ』
 ハッキリと分かるように扉を叩いたのだが、誰何の声のかけらもない。
「失礼し、するわよ」
 ついつい『失礼します』と言ってしまいそうになるのを直して扉を開き、少女の腕には少々重い程の扉の厚さに驚きながら、黒と紫の部屋に足を踏み入れる。
 豪奢な寝台には人一人分の膨らみが見える。よってそこにいることだけは確かであろうが、全く無反応なのは眠っているからだろうかと思いながら近づけば、案の定である。
「起こすのも、あれね。今日はこれを置いて帰ることにしましょう」
 言い聞かせるように呟いて、持っていた色とりどりの花の挿された花瓶ともう一つの見舞いの品を黒檀の机の上に慎重に置く。
 そうしてそっと寝台に近づいた少女は、突然腕を掴まれた。
「来てくれたのか?」
「びっくりさせないで・・・・・」
 大きくため息をつきながら、強ばった身体の余分の力を抜く。本気で驚いた為に何処となく恨みがましい声であった。
「やっと来てくれた」
 安堵の声に首を傾げる。『一体どうしたことなのだろうか?』と
「・・・・・熱はどう?風邪と聞いたけれど、本当にただの風邪?」
 世の人々が生き神と見る守護聖は、だからといって決して不死の存在ではあり得ない。確かに各々のサクリアによって常識を外れた力も操り、常人とは掛け離れた寿命を持っているとはいえ、本当はそれだけと言っても良いのだ。あくまでその身体は常人と変わらず傷つけられれば痛みを感じ、血を流す。ごくごく当たり前の身体なのだ。とすれば当然だが、病にもかかる。気の緩みだとかで意外とあっさりかかってしまうような風邪やなかなかに厄介な病も、何の垣根もなく存在する。無論−これが世間一般の風潮の元であるのだが−、病で守護聖がその任を降りるようなことだけは−どういうわけか−ないのも動かし難い事実ではある。
「風邪ではないな」
 黒光りする切れ長の瞳が笑みを称えている。
「不治の病だ」
 何処となく楽しそうな口調であったが、その台詞は少女にとってとんでもない言葉である。大きな瞳を更に見開いた。
「そんな・・・・・」
 震える声で少女は呟く。いまだ掴まれたままの右手とは反対の左手で口元を覆った。
「まぁ、薬がないでもないが」
 少女は気がつかない。狙いをつけた獲物を前にした野生の獣のような、法に縛られることのない者の瞳に。自分だけに従うある意味自由な無頼の徒の瞳に。
「何処にあるのですか?」
 ここしばらく何とかロザリアに怒られない程度に言葉遣いを直していた少女は、だが、ついつい元の言葉遣いに戻ってしまっていることにも気がつかない。
「すぐに取り寄せます。何処ですか?」
 切羽詰まった感情の込められた言葉に、青年の瞳に宿る笑みが変わる。物騒な、それは物騒な勝利者の笑み。どんな行為も当然の権利として行う傲慢な笑み。
 訝しむ暇もなかった。

 引きずり込まれた腕の中
 振り仰いだ瞳に映った闇の化身

 優しく残忍な  溶けてしまいそうな口づけ

 豪奢な寝台の周りに紗がかけられる。白い指がそれを束ねていた紐を解いたのだ。
「ふぅ」
 青年の下で少女が大きな呼吸をした。
 長い口づけからやっと解放された少女は自分を見下ろす青年を睨みつける。
 恐れを知らぬ強い眼差しに、青年は艶然と微笑んだ。
「どいて下さい」
 解き放たれれば一気に荒れ狂う、それ故の不気味な程の静寂をまとう休眠中の活火山のように、少女は激しい怒りに心を染めていた。
 頬や額、百歩譲って唇へも、親愛のキスなら許せるが、断じて違う。さっきのキスは絶対に違う!決して親愛ではなかった!
「断る」
 なぶるように金色の絹糸のような少女の髪に指を搦めながら、青年は応えた。せっかく手に入れたこの獲物を、そのまま帰すつもりなど彼にはさらさらなかった。

 ずっと欲しかった。女王位につく前から想っていたのだ。言葉にするには自分は口べたに過ぎた為に何も言えず、手の届かない人になってしまった。
 あの消失感 目の前にいながら何があろうと決して永遠に手の届かない人になった。
 諦めようと努めた。手の届かない人だと。やらなくてはいけない仕事の全てを終えて、世界を安定へと導いて、そうして二度と会わないようにしたのだ。想いを忘れることは決して出来ないと、もう分かっていたから。
 過去の日に愛した女神よりも、狂ってしまいたくなる程愛してしまった。そこまで愛してしまった。
 だから、二度と会わないと・・・・・
 だが、その存在もまた好意を抱いてくれていたという事実を知って決めた。
 世界への反逆だろうと、自分の手の内に手に入れると。
 狂ってしまったのかもしれない・・・・・

 『不治の病』は真実だ。『恋の病』は誰にも治せないモノだから。
 『薬がないでもない』も真実だ。『彼女自身』が腕の中にいれば恋に悩むこともない。

 真実にほんの少しごまかしを混ぜて、自分の手の届くところまでおびき寄せた。そして今や、怒りに心を染めた少女が腕の中にいる。
 それは、たとえようもない幸福だった・・・・・

 衣擦れの艶めいた音だけが黒と紫の空間に響く。
 暖かな乳白色の肌に手が触れる。一瞬身体を震わせた後には、まるで金縛りにあったように翠の瞳を見開いてほんの微かな動きもない少女の華奢な肩に、冷たい白大理石の手が触れた。
「っ」
 少女の身体が弓なりに跳ねる。唇が動くが耳に届く言葉にはならない。
 少女の柔らかく曲線を描く胸の半ばまでが淡い色の衣に変わって漆黒の絹糸、否、漆黒の髪によって覆われている。
 少女が『女』でしかないことを自覚させるような動作で、指先は愛撫を繰り返し、唇は口づけを繰り返す。白でしかなかった肌を染めていくように。
「あ、あぁ」
 震えるだけの唇が、やっと言葉を作り始めた。それが鍵となる。
「嫌!いや!イヤ!離して!離しなさい!イヤ!いや!嫌!こんなの」
 狂乱の渦はたやすく堤を破り、正気とは思えぬ絶叫が響く。
「こんなの絶対に認めない!離しなさい!いやぁ!」
 華奢ではあってもしなやかな柳を思わせる身体は十分に『女』としての成長を遂げていた。それが逃げようとがむしゃらに暴れる。激しい動きに豊かな胸元が完全に露になるのも念頭になく、ただ暴れる。
 乱じた心が現実を否定し、彼を拒絶する。

 今更ながらの拒絶に、心臓が痛む。分かっていたことでも、これ程までの拒絶にあっては流石に心が痛む。
 だがそれ以上に思う。『それこそごめんだ』と。『嫌われようが憎まれようが、構うものか』とまで思ったからこそ、今のこの状態が存在するのだ。

 罪はもはや犯された
 後はただ何処までも堕ちていくだけ

 音がするのではないかと思う程に強く手首が捕まれ、容易く抵抗は押え込まれる。
 白く薄い紗のかかった寝台の中で、黒い影が動く。
 何処かまだ優しさのあった口づけと愛撫は激しさを増し、現実を否定し、彼を拒絶していた声はそれ故に止めようのない快楽の声にすり変わる。
 その声故に更に影の動きは早くなり、少女の快楽の波は高くなる。刻々と激しくなるそれは、逃げることを考えることすらさせない、暗い水底に突き落とすよう・・・・・
 弄ばれるように、荒れた海に漂う寄る辺ない小船のごとく翻弄されるのみの少女の脳裏からも、もはや現実は微塵に砕かれ、かけらすらも失われ、残ったのは小さく無垢な子供のような少女自身だけだった。
 緑柱石の瞳から、金剛石より価値ある涙が零れる。

 零れて闇に溶ける前、流れるうちに唇から覗く舌がなめ取った。

 よく晴れた日の午前に、突然の招集に慌てて女王の間に集まった八人の守護聖と一人の女王補佐官は、誰よりも愛する可愛らしい女王の、信じられない言葉を聞かされた。
「女王位を女王補佐官ロザリア・デ・カタルヘナに譲ります」
 強すぎる驚愕に言葉のない一同の耳に、等しく聖なる女神は言った。
「私は罪を犯しました」

 偽りの宣誓  あってはならぬ夜  これ等は罪
 なれば罪には一体何を与えよう?
 答え  『罪』には『罰』を与えよう
 罪を犯せし者にはその罰を・・・・・


To be continued