紛れ込んだ泡沫の世界
プロローグ〜目覚めれば森の中〜

 目覚めるとそこは森の中だった。

「・・・って、暢気に川端康成や宮崎駿監督をパロっている場合じゃないのよね。ここ、どこよ?」
 軽く頭を振りながら周囲を見回すと、そう離れてはいない場所に親友の倒れている姿が目に入る。急いで近寄り、軽く肩を揺すった。
「お嬢、しっかりして、お嬢」
「う・・・・・姉、様・・・?」
 割合すぐに意識が戻ってきた親友だが、軽く頭を振りながら上げた顔を見た途端、硬直する。それは相対した親友も同様だった。
「・・・お嬢。私の視力が狂っていなけりゃ、貴女、確実に10歳は若返っているわよ」
「その言葉、そっくり姉様に返すわ」
 そして、沈黙。
「・・・・・非常識、極まりないわね」
「そうね」
 冷静なようでいて、実は何も考えられなくなっていた二人であった。





「とにかく、状況を把握しなくちゃね」
 しばらくは呆然としていたものの、このままではいけないと改めて二人は顔を突き合せる。
「確か、打ち上げをしていたわよね、私達」
「で、結構飲んだアルコールを醒まそうと公園でしばらく話していたはずだけど」
 確かにアルコールのお陰で少々・・・いや、かなりハイテンションではあったが。それが何故、こんな事態に陥っているのか。
「まだ酔っているのかしら?」
「それはないわよ、姉様」
「即答されても・・・・・」
「現実逃避も賢いとはいえないでしょ?」
 親友に軽く睨まれ、降参とばかりに両手を上げる。それを見てふわりと微笑んだ相方はふいに表情を真剣なものに変えた。
「姉様。非常識なことを言うけど・・・たぶん、ここ、私達の世界じゃないと思うの」
「お嬢も?私もそうだと思っていたんだけど・・・お嬢はどうしてそう思った訳?」
「ん〜、ただのカンかしら。姉様はどうして?」
「ここの『気』がね、私達の世界とは違う感じがするの」
 野性的なカンの持ち主と『気』を感じ取れる者との意見の一致に自分達の状況を薄々と感じ取る。
 改めて顔を見合わせた二人はほぼ同時に深いため息をつく。どう考えても先行きが暗いのだ。ため息をつきたくなるというもの。
「・・・あのね、お嬢。ここが異世界だと仮定してっていうか、たぶん、間違いなくそうなんだろうけど。名前、偽名にしない?」
「偽名?」
「偽名っていうと聞こえが悪いけど・・・もし、ここが『真名』が通用する世界だとすると、本名を名乗るのってすごくマズいと思うのよね」
「それは、確かに。知らないうちに誰かの意のままにされるっていうのも、業腹だわ」
「そういうこと。・・・そうね、私は『』って名乗ることにする」
「そう?じゃ、私は・・・『』にするわね」
「了解」
 お互いの名前を確認したところで二人は改めて周囲を見回してみる。割合、奥深い場所なのか、昼間のはずなのに妙に薄暗い感じを受ける。
「次は状況打破、といきたいところだけど・・・」
「この森の中じゃ逆に迷い子になりそうだし」
「でも、姉様。このままここにいても野垂れ死によ」
「迷い死にも嫌だけど、野垂れ死にも避けたいわね」
 なかなか厳しい状況に二人の眉間に皺が寄ってくる。
「確かに厳しいけど」
「そうね、厳しいかもしれないけど」

『私達は生き抜かなくては』

 二人、視線を合わせ、お互いの想いを読み取り、深く頷きあった。
 それは、生きようとする意思の力でもあった。
 ふいに、は視線を後ろへと流す。ほぼ同時にと同じ場所へ視線を向けた。その数秒後、木々の間から一人の青年が姿を現す。

「・・・・・お前ら、何者だ?こんなところで何をしている?」
「・・・・・・・・・・・!?」

 問いかける人物を見た二人は驚きの声を上げるのを必死になって抑えることになったのだった。







とうとう、始めてしまいました「サモンナイト2」夢。ある意味、無謀な挑戦ですが、末永くお付き合いくださると嬉しいです。
ヒロイン二人の名前が決まり、森の中から出てきた人は・・・。(バレバレですね)